診療支援
患者説明

乳がん
安藤正志
(愛知県がんセンター臨床試験部・薬物療法部)

1.乳がんの「術前化学療法」を受ける方へ

1)あなたの病気について

 あなたの病気は原発性乳がんです.現在のところ,検査上わかっている範囲では乳房以外の臓器(肺,肝臓や骨など)に転移は認められません.

 乳房のしこりのある側の脇の下のリンパ節は腫れているか,あるいは乳房のしこりが大きいか,または皮膚や乳房の下にある筋肉へがんの影響が及んでいる状態です.

 あなたの現在の病気に対しては下記の2つの治療法があります.

1)まず手術によってしこりを切除し,脇の下のリンパ節の転移の有無や乳房内での病気の広がりによって,手術後に放射線治療や抗がん剤またはホルモン剤による全身療法を行う方法

2)手術前に抗がん剤治療を行ってその後手術,手術後に切除したしこりに対する治療効果を診て,手術後に抗がん剤(術前化学療法とよびます),ホルモン剤,および放射線治療の追加を検討する方法

 今までの検討から,1)と2)は,乳がんの治療後の再発を抑える効果に差はありません.

 治療前のしこりが大きい場合に術前化学療法によって治療効果がみられれば,乳房温存(乳房を残す)が可能である可能性が高くなると予想されます.また,しこりが皮膚や筋肉に及んでいる場合は,手術前に治療をすることによってしこりを小さくできれば,手術にて乳房の下にある筋肉を切除したり,皮膚を大きく切除したりするのを避けることが可能であると考えられます.あなたの乳がんは,術前化学療法が勧められる病状です.

 以上,説明しましたように,術前化学療法を行うことによって治療効果が得られれば,手術の範囲を小さくすることが十分に可能であると予想されます.

 乳がんの性質により,術前化学療法で用いる抗がん剤は異なります.あなたのがんの性質は,ホルモン受容体の発現状況は,(陽性・陰性),およびHER2の発現状況は,(陽性・陰性)です.

2)化学療法について

(1)投与スケジュール

1)

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