診療支援
検査

2019-2020年版/編集者の序

 コンピュータの幾何級数的に増える演算能力とインターネットの広がりで世界のありようは急変している.経済先進国のリーダーは従来の民主主義国では想像できないような人物が次々とでてくる.グローバルな諸関係の均衡が求められる一方で,閉鎖的でローカル志向に重点をおく政策が好まれる.さらに新しい形のデータサイエンスを基盤とする大企業は従来型の製造業をしのぐ勢いで,時価100兆円の企業も出始めている.この30年,世界の富は増えているが,トップ1%の人間が富の50%を,トップ10%が90%をとる.この不公平さが世界中の人たちに何となく見える,感じる,隠せない現実となっているのだ.

 医療のように人と人の密接なアナログな現場では苦労が続く.患者と家族の期待と実際の医療のはざまで苦悩する医師・医療人たち.患者の期待と技術とともに高騰する医療費とその財源などの課題.1回の治療で5,000万円という薬品も出てきた.多くが公費で賄われている米国を除いた経済先進国では,このような「進歩」で公費が特定の大企業へ移っていく.

 そのような世界では患者が医師をはじめとする医療人に期待することは何だろう? 具合が悪いのだからベストの医療を,と思うのは当然だ.従来から自己負担の少ない国では政策転換には大きな政治的力量が必要だ.一人ひとりの日常の健康をモニターし,指示をする「AI」はもうそこに来ている.医師のところに来る前にほとんどのことがわかっている.鑑別診断,治療指針まで,診断確率も含めて「AI」だ.データが集まれば集まるほど「AI」の活躍の場が増え,実際の医療の現場の仕事のありかたも大きく変わってくる.このような時代に医師の役割はどうなるのだろう? では臨床検査の役割はどうか?

 市民から見れば医療者の仕事は病院にでも来ない限りわかりにくい.病院に来て見れば医療人たちが激務で,診療要請に応じなければならないが,労

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