診療支援
検査

検査計画の進め方 腫瘍性疾患
石黒 洋
(埼玉医科大学国際医療センター教授・乳腺腫瘍科)

 腫瘍性疾患におけるバイオマーカーは,リスク評価,スクリーニング,鑑別疾患,予後予測,治療効果予測および疾患進行のモニタリングなどさまざまな状況での使用が想定される.したがって,分析法のバリデーションや臨床的有用性の評価などが臨床導入前に適切に行われているべきである(Mol Oncol 6:140-146,2012).特に腫瘍性疾患の診断は,その後に施行される手術や抗癌治療の侵襲性がきわめて高いこともあり,病理組織学的な確認が求められる.バイオマーカーを用いた臨床試験には図20に示すように複数のデザインがある.以下に代表的なバイオマーカーについて概説する.


Ⅰ.効果予測バイオマーカー


 主に薬剤の有効性を予測するバイオマーカーであり,当該薬剤の保険承認と密接な関わりをもつ.1990年代以降に分子標的薬が登場するにつれ,分子標的薬の標的の遺伝的変化や蛋白発現を認識できるバイオマーカーの開発が同時に進められた.ゲフィチニブのように,薬剤承認時はバイオマーカーが不明であり当該薬剤の承認条件(効能・効果)には含まれていなかったが,後にバイオマーカー(EGFR遺伝子変異)による治療選択が可能となり承認条件に修正が加わったものもあれば,抗HER2治療薬であるトラスツズマブにおけるHER2蛋白過剰発現のように,薬剤の承認時から承認条件に含まれていたものもある.これらの効果予測バイオマーカーは陰性時において効果が期待できないことを強く示唆するため,当該薬剤の適応を判断するのにきわめて有用である.より優れた有効性を示す薬剤(HER2低発現におけるトラスツズマブデルクステカンなど)が開発された場合に,バイオマーカーの判定基準が変化する可能性もある.多くは,手術や生検で採取された腫瘍組織を用いて検査を施行する.乳癌診療におけるエストロゲン受容体やHER2蛋白発現などが代表的である.特に前者は,効果

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