診療支援
検査

検査計画の進め方 救急・急変患者に対応する検査
小野 一之
(獨協医科大学教授・救急医学)

Ⅰ.検査の目的


 高度な意識障害,ショック,呼吸不全などは,適切な治療を速やかに行わねば生命に重大な危機を及ぼす状態である.このような患者に対応する検査の進め方には,通常の外来診療時とは異なる点がある.確定診断を求めて検査を進めるのは同じだが,緊急性の高い病態を把握し,直ちに対症療法(広義の蘇生)を開始する必要がある.つまり,全身状態の把握や初期治療に必要な検査が優先的に行われる.異常値に対して緊急に治療を要する検査(動脈血ガス分析,血清電解質,血糖,ヘモグロビンなど)や,輸血に必要な血液型や交差試験などがそれにあたる.治療(蘇生)を行いつつ,臨床症状や病歴と画像診断から原因疾患を絞り込み,鑑別診断や重症度判断に必要な検査を追加して行っていく.なお,疾患ごとに特異的な検査項目に関しては,それぞれの検査の項を参照していただきたい.


Ⅱ.基本的な検査項目


 表52に基本的な緊急検査項目を示す.これらの検査項目の一部は,救急外来や集中治療室内などで検査できる施設も多い.血液ガスや血糖値のように緊急度の高い検査や検査技師の常駐が困難な施設などでは整備を検討すべきである.また,細菌検査など簡易検査キットが市販されている検査も多数存在する.通常の検査と適宜併用することで診断の迅速化が望める.ただし,表中の全検査項目が全症例に必須ではない.盲目的に緊急性のない検査まで行うことは,医療経済上好ましくないばかりか,真に緊急の検査を遅らせることになる.患者の状態に応じて選択して検査を依頼すべきである.

 基本的な検査の進め方を図23に示す.これらの検査が常に可能とは限らないが,検体を保存して後日に測定をすることで有用な情報が得られるものもある.保存方法を確認し,検体の採取のみを行うことも考慮すべきである.


Ⅲ.検査施行時の注意点


①検体が正しく採取されるように注意する.

 慌ただしい処置の合間に採取され

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