診療支援
検査

トロンビン・アンチトロンビン複合体〔TAT〕   176点(包)
thrombin-antithrombin complex
橋口 照人
(鹿児島大学大学院教授・血管代謝病態解析学分野)

基準値 3.75ng/mL以下


測定法 ELISA


検体量 血漿0.4mL(クエン酸加)


日数 2~4日


目的 ①トロンビン生成の確認,②DICや血栓症の診断,凝固亢進状態の把握


Decision Level

●3.75~20ng/mL(増加)

[高頻度]DIC,血栓症,心筋梗塞,敗血症,肝硬変 [可能性]大動脈瘤,悪性腫瘍,手術,糖尿病,ネフローゼ症候群,膠原病,妊娠高血圧症候群 [対策]Dダイマー,可溶性フィブリンモノマー複合体(SFMC),フィブリン/フィブリノゲン分解産物(FDP),アンチトロンビン(AT),プラスミン・α2-プラスミンインヒビター複合体(PPIC)などの測定

●20ng/mL以上(高度増加)

[高頻度]線溶亢進型DIC,血栓症,急性前骨髄球性白血病,多臓器不全,転移性悪性腫瘍 [可能性]手術,頭部外傷,ネフローゼ症候群 [対策]DICの存在の確認.原疾患の治療.ヘパリンなど抗凝固療法の適応の考慮


異常値のでるメカニズムと臨床的意義

 生理的に重要な凝固制御因子であるATは,トロンビンが生成されるとその過剰な作用を防止するためにトロンビンと1:1結合してこれを失活させ,TATが形成される.したがってTATはトロンビン生成のマーカーとなる.

 DIC基準(日本血栓止血学会2017年版)では基準範囲上限の2倍以上に1点を与えている.


[関連する検査]

①凝固亢進の場合,SFMC,SF,FMCとともに上昇し,二次線溶を反映してFDP,Dダイマー,PPICも上昇する.②FDPやDダイマーが上昇し,胸水や腹水の貯留している場合,TATが基準値内であればDICを否定できる.③SFMC,SF,FMC,TATが高値を示した場合は,トロンビンによるフィブリン血栓が形成される病態を示唆する.


[特定背景のある患者]

 妊娠末期に増加する.


判読

①基準値内であればDICは否定的である.②トロンビン形成マー

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