基準値 ジストロフィン遺伝子の欠失を認めない
測定法 マルチプレックスPCR法でジストロフィン遺伝子の欠失の有無を判定
検体量 血液7.0mL(EDTA-2Na加)
日数 14~18日
目的 Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)ならびにBecker型筋ジストロフィー(BMD)の遺伝子診断
Decision Level
マルチプレックスPCR法はジストロフィン遺伝子の欠失の好発部位のエクソンを複数のプライマーセットを用いて同時にPCRで増幅する方法である.ChamberlainとBeggsの2つのプライマーがある.結果の解釈は以下のとおり.
●ジストロフィン遺伝子の欠失あり
[高頻度]DMDまたはBMDである
●ジストロフィン遺伝子の欠失なし
[可能性]欠失の好発部位以外の場所の変異,重複,点変異などの微小変異の可能性は否定できないため,DMD,BMDを否定することはできない
異常値のでるメカニズムと臨床的意義
DMDはX連鎖性潜性遺伝(劣性遺伝)の遺伝性疾患であり,頻度の高い筋ジストロフィーである.わが国では出生男児の4,000~5,000人に1人の割合で発症する.幼少期に発症し,走るのが遅い,転びやすいなどの症状で,2~4歳で気づかれる.10歳前後に歩行不可能となり,20歳前後で寝たきり,呼吸不全,心不全に至る.BMDもX連鎖性潜性遺伝(劣性遺伝)であり,DMDと症状は似ているが,程度は軽く進行は緩徐で,予後は比較的良好である.DMDとBMDは,ともにジストロフィンの異常が原因である.DMDではジストロフィンが欠損しており,BMDではジストロフィンの分子量が正常より小さいか,発現量が正常よりも少ないかのいずれかであることが知られている.
ジストロフィン遺伝子はX染色体短腕Xp21に位置しており,エクソンが79個ある巨大な遺伝子である.そのなかの小さな異常でもジストロフィン遺伝子全体の
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