診療支援
検査

尿検査の役割と選択基準
今井 裕一
(多治見市民病院院長)

異常値のでるメカニズムと臨床的意義

 尿検査の役割としては,①スクリーニング,②確定診断,③除外診断,④活動性のマーカーがある.

●スクリーニング

 ①早期発見によって治療可能な病気を対象としていること,②検体の採取が簡便であること,③検査法が簡単であること,④低コストであること,⑤見逃しが少ないこと(感度が高いこと),⑥再現性が高いことなどがスクリーニングの条件としてあげられている.尿検査の試験紙法は,これらの条件をほぼ満たしている.試験紙法の内容としては尿蛋白,尿潜血反応(血尿),尿糖,尿ウロビリノゲン,尿ケトン体がある.

●確定診断のための検査

 陽性結果によって診断確率を上昇させる.

 検査を複数行っても診断確率が100%になることはない.治療法を選択するためには治療閾値と比べ十分な診断確率があればよいことになる.検査の感度(病気のある人で検査が陽性となる確率)と特異度(病気のない人で検査が陰性になる確率)から陽性尤度比〔感度/(1-特異度)〕を利用する.ある病気(病態)を50%の確率(オッズ1)で考えたときに,陽性尤度比が大きな検査(たとえば,9)を行い陽性結果が得られると,検査後オッズは(1×9=9オッズ)となり,検査後確率は90%〔オッズ/(1+オッズ)〕まで上昇する.尿検査では,糸球体腎炎に対する尿沈渣,尿蛋白定量,また間質性腎炎に対するα1-ミクログロブリン,β2-ミクログロブリン,N-アセチル-β-D-グルコサミニダーゼ(NAG)が相当する.急性腎不全における尿比重,尿量も該当する.さらにポルフィリン症に対する尿ポルフィリン体もあてはまる.

●除外診断のための検査

 陰性結果によって診断確率を低下させる.

 この場合は陰性尤度比〔(1-感度)/特異度〕を使用する.例として感度90%,特異度85%の検査は,陽性尤度比〔0.9/(1-0.85)〕=6,陰性尤度比〔(1-0.9

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?