病態
食道粘膜に発生する悪性腫瘍で,主に扁平上皮癌と腺癌に分かれる.60~70代,男性に好発し,占拠部位は胸部中部食道,次いで胸部下部食道,胸部上部食道の順に多い.飲酒と喫煙がリスク因子であり,flusher(飲酒で顔が赤くなる人)はハイリスクとされる.
[参考]
食道癌診療ガイドライン 2022年版
異常値
・上部消化管内視鏡検査 食道癌の診断の契機となる最も標準的な検査で,食道粘膜の色調や凹凸などで発見される.NBI(narrow band imaging)・BLI(blue laser imaging)などのimage-enhanced endoscopy(IEE)や,ヨード散布による色素内視鏡を用いることで,早期の食道癌も効率よく発見することができる.また拡大内視鏡を用いた検査では,表層の微小血管形態やAVA(avascular area)を観察することで日本食道学会の新分類に基づき深達度診断をある程度,正確に行うことができる.深達度診断には,ときに超音波内視鏡検査も行って総合的に判断することもある
・上部消化管造影検査 造影検査に関しては,進行食道癌に対して推奨される一方で,表在食道癌に対する有効性は確立していない.浸潤が浅いほど描出率は低下する.したがって,深達度診断にはある程度有効だが,表在癌の発見には向かない検査といえる
・造影CT,MRI 癌の周辺臓器への浸潤や,リンパ節転移,遠隔転移の有無などを調べる目的で行われる.下記のごとく,食度癌のステージング(表221図)を行う際に非常に大切な検査である
・PET 腫瘍で糖代謝が亢進することを利用し,質的検査の一環としてPET検査を行うことがある.またPET検査は,治療後における効果判定の際に用いられることもある
・腫瘍マーカー 食道扁平上皮癌の腫瘍マーカーとしてSCC,CEA,CYFRAが,食道腺癌の腫瘍マーカーとしてCEA