診療支援
検査

アルコール性肝障害(ALD)
富谷 智明
(埼玉医科大学教授・消化器内科・肝臓内科)
持田 智
(埼玉医科大学教授・消化器内科・肝臓内科/診療部長)

病態

 常習飲酒家,大酒家に生じる,エタノールによる直接的,間接的作用による肝障害.多彩な病態を示し,アルコール性脂肪肝,アルコール性肝線維症,アルコール性肝炎,アルコール性肝硬変があげられる


[参考]

 アルコール性肝障害診断基準 2011年版


異常値

・トランスアミナーゼ 高値.AST/ALT>1,ただし過栄養性脂肪肝を合併している場合には<1.禁酒により改善

・γ-GT 高値.高頻度(血清ALP正常).禁酒により改善(禁酒4週で前値の40%以下,もしくは基準値の1.5倍以内)

・中性脂肪 高度~中等度の上昇

・ビリルビン ときに高値

・末梢血多核白血球数 増加

・肝炎ウイルスマーカー 通常陰性.しかし陽性で否定はできない

・肝生検 アルコール硝子体,好中球浸潤を伴う巣状壊死,肝細胞ballooning,小葉中心性の線維化〔細胞周囲性線維症(pericellular fibrosis)が特徴的〕,肝硬変の場合,小結節性


経過観察のための検査項目とその測定頻度

●血液検査‍ [急性期]週2~3回 [回復期]1~2週ごと [定期的スクリーニング]1~3カ月ごと

●腹部超音波‍ [急性期]1~2週ごと [回復期]2週ごと [定期的スクリーニング]3~6カ月ごと

●腹部CT‍ [急性期]入院時 [回復期]適宜 [定期的スクリーニング]適宜

●肝生検 いつでも1回


診断・経過観察上のポイント

①エタノール60g/日,女性などではエタノール40g/日以上を5年間以上飲み続けた場合に起こるとされるが,それ以下でも発症する.一時に大量に飲酒した後,アルコール性肝炎を生じ,易疲労感,食思不振,悪心,嘔吐,下痢,発熱などの自覚症状とともに,肝機能異常,黄疸,低アルブミン血症,γ-GTの高値,プロトロンビン時間の延長などの臨床所見を呈する.②高度な黄疸(血清ビリルビン10mg/dL以上),凝固因子活性の著しい低下(プロトロンビ

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