診療支援
検査

腎盂腎炎
堀田 晶子
(東京大学大学院医学系研究科・医学部臨床実習・教育支援室(腎臓・内分泌内科))

病態

 下部尿路から上行性(逆行性)に細菌感染が生じ,腎盂および腎実質に炎症が波及した状態を指す.一般に閉経前成人女性の急性腎盂腎炎は単純性,それ以外の背景の場合は複雑性に分類される.急性と慢性,単純性と複雑性では背景,病態や経過が通常異なる.敗血症を合併した場合,尿路性敗血症(urosepsis)として疾患概念を区別する傾向にある


[参考]

 JAID/JSC感染症治療ガイドライン2019―尿路感染症―


異常値

・血液検査 白血球増多および左方移動,CRP・プロカルシトニン高値

・尿検査 定性で血尿,尿沈渣で白血球を認める.輝細胞(glitter cell),白血球円柱などの特徴的所見,エステラーゼ反応陽性などがみられる.膿尿となることもある.赤血球の変形は通常みられない

・尿培養 急性の場合は起炎菌が同定される.慢性に経過する場合は検出されないことが多い

・血液培養 敗血症を併発した場合,尿培養と同一の菌が検出されうる

・BUN,Cr 急性ではまれに一過性の腎機能低下(BUN,Cr上昇)を認める.慢性に経過し,進行すると慢性腎不全に陥る

・身体所見 急性の場合は高熱(ときに40℃以上),肋骨脊柱角の叩打痛が典型的な所見として認められる


経過観察のための検査項目とその測定頻度

●血液検査(血算,CRP,BUN,Cr)‍ [急性期]週2~3回 [回復期]週1回程度(寛解するまで)

●尿検査(定性,沈渣)‍ [急性期]週2回程度 [回復期]週1回程度(寛解するまで)

●尿培養‍ [急性期]発症時起炎菌同定・感受性確認のため(抗菌薬使用前が望ましい)

●血液培養‍ [急性期]起炎菌同定・感受性確認のため(尿培養と同じ菌が同定されれば診断的価値あり)

●画像診断 超音波検査は簡便に施行可能でありスクリーニングとして行う.CT・MRIは必要に応じ施行する


診断・経過観察上のポイント

①単純性の急性腎盂腎炎は成人閉経前

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