病態
前立腺肥大症の病態は前立腺腫が増大することによる尿道抵抗の上昇による.その結果として膀胱機能が影響を受け,複雑な様相を呈する.閉塞に伴う膀胱機能の変化とその症状は排尿困難以外に頻尿,尿意切迫感,夜間頻尿などの刺激症状といった形で現れる.しかし,夜間頻尿は夜間多尿や不眠,心不全などの種々の要因によって起こることは留意すべきである
[参考]
男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドライン,2017
異常値
・国際前立腺症状スコア(I-PSS) 閉塞症状と膀胱刺激症状を数値化した7項目の質問紙であり,下部尿路症状(LUTS)の病状の把握と治療に有用.スコア8点以上が治療の対象となる
・尿流量測定 尿流量で得られる所見は,排尿量(mL):尿道を通して排出された全尿量,最大尿流量(mL/秒):尿流量の最大値,平均尿流量(mL/秒):排尿量÷排尿時間,排尿時間(秒):排尿行為の総持続時間,尿流時間(秒):測定可能な尿流が実際に起こっている時間,である.基準値(男性,女性)は,排尿量(mL):(210~338,264~338),最大尿流量(mL/秒):(15.7~24.4,26.0~30.5),平均尿流量(mL/秒):(7.8~13.6,21.5),尿流時間(秒):(25~26,26),残尿量(mL):(19~20,19~20)である.
・直腸診 前立腺は肛門より約3~5cm上方の直腸壁ごしに触れる.前立腺肥大症では表面平滑,弾性硬,中心溝の消失,境界明瞭な腫大した前立腺を触れる.
・超音波(経腹,経直腸的) 被膜エコー像は連続性を保ち,腫大した内腺は均一な内部エコー像を有する.3方向測定により体積を求める.正常は20mL以下.50mL以上は重症前立腺肥大症と判定される.
・逆行性尿道造影 前立腺部尿道の延長,扁平化,膀胱底の挙上,膀胱内への突出像を調べる
・経静脈性腎盂造影 水腎症,膀胱肉柱形成