病態
妊娠20週以降分娩後12週までに高血圧がみられる場合,または高血圧に蛋白尿を伴う疾患.以前は妊娠中毒症と呼ばれていたが,2005年から妊娠高血圧症候群(pregnancy induced hypertension;PIH)との名称に改められた.さらに2018年から日本語名は変わらないが,英文名がhypertensive disorders of pregnancy(HDP)に変わり,本症候群に妊娠前,あるいは妊娠20週までに高血圧を発症していた高血圧合併妊娠も含むことになった(日本妊娠高血圧学会2017)
[参考]
妊娠高血圧症候群の診療指針2021
異常値
・血圧 収縮期140mmHg以上,または拡張期90mmHg以上を高血圧とし,収縮期160mmHg以上,または拡張期110mmHg以上を重症と分類する
・尿蛋白 24時間尿で300mg/日以上で2g/日未満を軽症,2g/日以上を重症とする
・クレアチニン(Cr) 1.0mg/dL以上
・BUN 20mg/dL以上
・血清蛋白 5g/dL以下
・尿酸 6mg/dL以上
経過観察のための検査項目とその測定頻度
●血圧 連日
●尿蛋白 連日
●Cr,BUN,血清蛋白,尿酸 1週ごと(重症の場合は2~3日ごと)
●血小板数 [急性期]2~3日ごと(重症の場合はDICの予知に毎日測定)
●ヘマトクリット(Ht)値 [急性期]2~3日ごと(重症の場合はDICの予知に毎日)
●フィブリノゲン/フィブリン分解産物(FDP) [急性期]2~3日ごと(重症の場合はDICの予知に毎日)
診断・経過観察上のポイント
①妊娠高血圧症候群の経過は高血圧,蛋白尿の程度を中心にモニターする.②腎機能は定期的に検査する.③血小板数の低下,Ht値の上昇,FDPの上昇,ATの低下があればDICを疑って精査を行う.④母体の観察とともに胎児の発育不全や仮死の有無を超音波画像診断やノン