診療支援
検査

不育症
竹下 俊行
(竹下レディスクリニック院長)

病態

 妊娠は成立するが流産や死産を繰り返して生児が得られない状態と定義されている.しかし,1回でも10週以降の胎内死亡があり抗リン脂質抗体症候群が疑われる場合や,生児があっても流産や死産歴があり次回妊娠で流死産のリスクが高い場合も不育症の概念に含めるようになっている.不育症のリスク因子には,抗リン脂質抗体症候群,子宮形態異常,夫婦染色体異常などがあり,それぞれの病態に応じた対応が必要になる


[参考]

・産婦人科診療ガイドライン―産科編2020

・不育症管理に関する提言2021


異常値

●超音波検査(3D):中隔の長さ1cm以上

●抗リン脂質抗体

・抗カルジオリピンIgG抗体>12.3U/mL

・抗カルジオリピンIgM抗体>20.8U/mL

・抗β2グリコプロテインⅠ IgG抗体≧0.7U/mL

・抗β2グリコプロテインⅠ IgM抗体>17.5U/mL

・ループス・アンチコアグラント(dRVVT)≧1.3

・ループス・アンチコアグラント(リン脂質中和法)≧1.17

●血液凝固系検査

・APTT(各検査室の基準値以上)

・凝固第Ⅻ因子<50

・プロテインS抗原量<59

・プロテインS活性<56

●内分泌系検査

・TSH≧4.0かつ抗TPO抗体陽性


経過観察のための検査項目とその測定頻度

・超音波検査(2D,3D),子宮卵管造影

・抗リン脂質抗体症候群の診断:ループス・アンチコアグラント(dRVVT,APTT法,リン脂質中和法),抗カルジオリピン抗体IgG・IgM,抗β2グリコプロテインI抗体IgG・IgM

・上記が陽性の場合,12週間後に再検する.

・血液凝固異常:PT,APTT,凝固第Ⅻ因子,プロテインS抗原量・活性

・TSH,FT4,血糖値,HbA1c

・夫婦染色体検査(Gバンド法)


診断・経過観察上のポイント

①子宮内腔の形態診断では中隔子宮と双角子宮の鑑別が重要である.3D超音波検査で子宮底漿膜側の陥凹がなく,中隔の長さが1

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