診療支援
検査

乳癌
明石 定子
(東京女子医科大学教授・乳腺外科学)

病態

 乳腺内の乳管もしくは小葉の上皮から発生する悪性新生物.日本人女性で,最も罹患数の多い癌腫であり,生涯で9人に1人罹患すると試算されている


[参考]

 乳癌診療ガイドライン2022年版


異常値

乳房超音波 乳腺内の不整形低エコー腫瘤,あるいは非浸潤癌では非腫瘤性病変として描出されることもある

マンモグラフィー 腫瘤,悪性石灰化,局所的非対称性陰影,構築の乱れなどとして描出される.高濃度乳房の場合,感度が低下することが問題となっている

造影乳房MRI 造影される腫瘤像,腫瘤非形成性病変などとして描出される.術前の広がり診断あるいはBRCA1/2陽性などの乳癌罹患高リスク女性に対するスクリーニングとして用いられる

血液検査 CEA, CA15-3, ST439などの腫瘍マーカーの上昇が進行癌で認められることもあるが,乳癌の早期発見には不適である


経過観察のための検査項目とその測定頻度

・乳房超音波 年1回行うことが多い

・マンモグラフィー 対側乳房および乳房温存術後は患側乳房に対して,切除可能な乳癌検出のため年1回行うことがガイドライン上推奨されている

・視触診,問診 3年以内は3~6カ月ごと,3~5年は6カ月~1年ごと,5年以上は年1回行う


診断・経過観察上のポイント

①スクリーニングとして実施されるマンモグラフィー,乳房超音波検査の診断は,癌の発見確率に応じてカテゴリー分類される.精査施設では,必要に応じ細胞診・針生検を行って診断する.②術後の再発リスクはリンパ節転移の有無,転移個数,サブタイプ(ホルモン受容体,HER2の組み合わせで決定される)によって異なる.術後の受診頻度はこれらを考慮して決定する.③定期的に遠隔転移の画像診断(PET,CT,肝臓超音波など)や腫瘍マーカー測定を行うことにより,生存率が改善するというエビデンスはない.特に,再発リスクの低いstageⅠ,Ⅱ乳癌術後の無

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