診療支援
検査

熱中症
田中 佑也
(杏林大学医学部救急医学)
山口 芳裕
(杏林大学教授・医学部救急医学)

病態

 熱中症とは暑熱環境における身体適応の障害によって起こる状態の総称である.熱中症の発生には環境因子が必要条件であり,重要臓器の特に脳,肝,腎,血液凝固系の高体温そのものによる障害と,脱水と心機能低下による臓器虚血が病態の本質である.


[参考]

 熱中症診療ガイドライン2015


異常値

●血液ガス分析 代謝性アシドーシス,代償性呼吸性アルカローシス,血糖値低下,乳酸値上昇

●採血検査

●生化学 ナトリウム(Na)異常(Na欠乏性脱水による低Na血症が主な病態だが,高齢者などが高Na血症になることがある),カリウム低下,リン低下,マグネシウム低下.尿素窒素/クレアチニン上昇,クレアチンキナーゼ上昇.AST,ALT上昇

●血算 ヘモグロビン,ヘマトクリット上昇

●凝固 プロトロンビン時間延長,フィブリノーゲン低下,フィブリン・フィブリノゲン分解産物増加

●尿検査 尿潜血陽性,尿中ミオグロビン陽性


経過観察のための検査項目とその測定頻度

●採血検査 意識障害,体温,発汗などは,短時間に大きく変化・変容するので,血液検査により生化学データや血液凝固異常を継続的に観察し,病態の理解と変化の把握に努める

●電解質 水分とともにNaなどの電解質が喪失するので,水分の補給に加えて適切な電解質の補充が重要である

●AT-Ⅲ,トロンボモジュリン 本邦では播種性血管内凝固症候群(DIC)合併例の治療にAT-Ⅲ製剤およびトロンボモジュリン製剤が選択されることがあるため,血液検査の項目にAT-Ⅲ,トロンボモジュリンを考慮してもよい


診断・経過観察上のポイント

①「暑熱による諸症状を呈するもの」のうちで,他の原因疾患を除外したものを熱中症と診断する.暑熱による障害は従来,主に症状から分類され,熱失神,熱痙攣,熱疲労,熱射病と表現されてきた.しかし,熱中症の重症形の概念である熱射病の三主徴である「意識障害,体温40℃以上,発汗停止

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