診療支援
治療

第2版 序

 「今日の救急治療指針」の初版が世に出てから15年の歳月が過ぎ去りました.この間に救急医療を取り巻く環境は大きく変わりました.画像診断,低侵襲手技,臓器移植,新薬,再生医療など,医学・医療は長足の進歩を遂げました.医療はますます高度化し,国民の医療に対する期待が膨れ上がる一方で,深刻な医療事故が次々と起こりました.医療不信が高まり,安易に訴訟へと進む風潮が生まれました.卒後臨床研修の義務化と病院勤務医師の過酷な勤務状態の顕在化,女性医師比率の増加への未対応,総医療費抑制に伴う病院の疲弊が「医療崩壊」を招きました.これらの歪みを最も鋭敏に反映するのが救急医療です.重症救急患者の「受け入れ不能」が再燃しました.

 他方,人口の少子高齢化,交通安全対策の推進,産業構造の変化に伴い,救急医療の需要は質・量とも大きく変わりました.従来の外因性救急に代わり,脳卒中や急性心筋梗塞などの内因性救急が急増し続けています.また,少子化が進む中で産科や小児救急が大きな社会問題となりました.

 このように周囲環境が急速に変化する中で,従来の救命救急センターを中心とする外因性重症救急に重点を置いた救急医療体制を見直す動きが起こりつつあります.多種多様な病態や重症度を含む救急患者に上手く対応するためには,どのような救急医療体制が良いのか模索が始まっています.いわゆる北米型のER方式も候補の一つですが,まだ結論は出ていません.おそらくは答えは,全国一律ではなく,それぞれの地域や病院の実情に応じた救急医療体制を創造することのように思われます.しかし,悠長なことは言っておれません.今この瞬間にも全国で何台もの救急車が救急患者を搬送しています.

 ところで,救急患者の99%は,救命救急センターの救急科専門医ではなく一般病院の内科医や外科医が診ています.本書は,初療を担当するそれらの内科医や外科医,ER医,研修医が利

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