診療支援
治療

上気道閉塞
upper airway obstruction
林 寛之
(福井大学医学部附属病院・総合診療部)

A.ER診療のポイント

 救急診療の基本である気道が障害されると,4分で脳の不可逆的変化を生じてしまい生命を脅かされるので,最も緊急を要する病態である.

●完全上気道閉塞をきたしている場合は,気道emergencyであり,応援を呼んでいる暇はない.すぐに気道を確保しなければ命を失う.

●上気道異物であれば,異物の除去が必須であるが,短時間に気道開通がかなわなければ外科的気道確保(輪状甲状間膜穿刺,輪状甲状間膜切開)を要する.気管切開は時間を要するため,この場合には禁忌である.

●不完全閉塞であれば,気管挿管による気道確保を行う.緊急気道確保の方法は様々な方法があり,自分が最も得意とする方法を数手持っておく必要がある.


B.最初の処置

 吸気時の喘鳴(stridor)は上気道閉塞のサインである.窒息の場合は手を喉にあてがうチョークサイン(図1)を呈する.高度ないびきも舌根沈下による上気道閉塞を疑う.上気道閉塞を疑った場合は,SpO2モニターしつつ,全症例に100%酸素(リザーバーマスクで10L以上の酸素投与)を投与し,応援を呼ぶ.患者から決して目を離してはいけない.

1意識障害で舌根沈下による上気道閉塞の場合(物理的な上気道閉塞がない場合)

1気道確保 まず用手的気道確保(頭部後屈あご先拳上法,下顎挙上法)を行う.頸椎損傷を疑う場合は下顎挙上法を選択する.

2エアウェイ 続いてエアウェイを挿入する.経口エアウェイなら口角から下顎角までの長さ,経鼻エアウェイなら鼻孔から外耳孔までの長さのものを選択する.

①経口エアウェイは意識障害で自発呼吸があり,嘔吐反射のない者に使用される.エアウェイを逆向きに(凸面を舌に沿わせて)挿入し,先端が咽頭に達したら180°回転させる.舌を押し込まないよう注意する.経口エアウェイで嘔吐反射が起こらない場合は早晩気管挿管を要すると予想される.

②経鼻エアウェイは鼻粘膜を

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