A.ER診療のポイント
循環血液量減少性ショックは出血や血漿成分の漏出などにより有効循環血液量が減少することで生じる.
1原因
●原因は,①外傷,②消化管からの出血(吐血,下血など),③内因性疾患による腹腔内出血(肝臓癌破裂など),④治療に伴う出血(手術操作など),⑤熱傷(血漿成分の創面や組織間への漏出),⑥腹膜炎,急性膵炎,腸閉塞など(血漿成分の腹腔内,後腹膜腔内,腸管内への漏出)などである.
●本項では,最も緊急性が高い外傷による循環血液量減少性ショック(出血性ショック)の診断,そして初期治療を中心に述べる.出血性ショックに対応できれば,出血以外の低容量性ショックには十分対処できる.
2診断
収縮期血圧のみで出血性ショック(以下,ショック)を判断することは,ショックの認知を遅らせる可能性がある.通常,有効循環血液量の30%以下の出血では,生体の代償機転が生じることで収縮期血圧の低下は起こらないとされている.したがって,ショックの早期診断には,皮膚所見,末梢循環所見,脈の所見,意識レベルなどが重要となる.
●皮膚所見 早期診断には,最も重要な所見である.末梢血管収縮による皮膚の蒼白,皮膚温の低下,冷汗などはショックの早期所見と診断する.
●末梢循環所見 災害時のトリアージなどにも使われる簡便なテストとして,capilary refill time(CRT:毛細血管再充満時間)がある.爪床または小指球を5秒間白くなるまで圧迫する.そして,圧迫を解除した後,再び赤みが戻るまでの時間を末梢循環の指標とするものである.2秒以上ならば異常で,末梢循環不全,すなわちショックと診断する.
●脈の所見 頻脈はショックの早期の臨床症状である.頻脈は,乳児では160/分以上,幼児では140/分以上,学童期では120/分以上,成人では100/分以上とされている.高齢者やβブロッカーを服用している患者は,交感
関連リンク
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