診療支援
治療

敗血症性ショック(感染性ショック)
septic shock
嶋津岳士
(大阪大学大学院教授・救急医学)

A.ER診療のポイント

●敗血症や重症感染症に起因したショック状態(急性循環不全)を指す.敗血症性ショックが代表的な名称であるが,細菌性ショック,エンドトキシンショックとも呼ばれる.発生機序による近年のショック分類では,血液分布異常性ショックのなかの感染性ショック(septic shock)に該当する(表1).

●わが国では従来,菌血症を伴うものを「敗血症」としてきたが,英語で“sepsis”という場合には,「感染症が原因となって生じる全身性炎症反応症候群(SIRS)」と定義されている(表2).severe sepsis,septic shockなどについても同様に明確な定義がなされているので用語に留意する必要がある(表3).

●ER診療においては,ショック症状(蒼白,虚脱,冷汗,脈拍微弱,呼吸促迫など)や循環不全の所見(乳酸アシドーシス,乏尿,急性意識障害など),あるいは,いわゆるwarm shockの症状(皮膚の紅潮,血圧低下,心拍出量増大)があり,それらが感染に起因すると推測される場合には,敗血症性ショックと判断して直ちに対応を開始する.また,十分な輸液管理を行っても低血圧が持続する場合,血管作動薬を使用することによって血圧が維持されていても臓器障害や循環不全がある場合も同様に判断する.

●敗血症性ショックの原因としてERで遭遇する可能性の高い感染症には,敗血症(sepsis),脳炎,髄膜炎,縦隔炎,膿胸,肺炎,心内膜炎,横隔膜下膿瘍,腹膜炎,胆道感染症,肝膿瘍,腎盂腎炎,ガス壊疽,壊死性筋膜炎,トキシックショック症候群などがある.また,カテーテルの挿入されている患者や免疫不全のある患者はリスクが高い.


B.最初の処置

 バイタルサイン(意識,血圧,脈拍,呼吸,体温,時間尿量)を確認し,病歴聴取を行う.そのうえで,心肺蘇生を含めた緊急処置を行うとともに,基本的な検査と感染源

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