A.ER診療のポイント
●救急外来で「典型的なショック患者と少し違う」と感じたら,神経原性ショックを疑う.収縮期血圧が60mmHg前後でも比較的安定した呼吸,重篤感がみられない患者の表情,採血などの痛み刺激でも脈拍が変化しない,など.
●四肢の末梢血管は拡張していて皮膚の色調も良好で,冷感はみられない.全身状態も比較的安定している.
●見た目で重篤感があれば,ショックの原因に関係なく患者搬入と同時に初期治療を開始する.
●腹痛などの疼痛刺激で迷走神経が刺激され脈拍数は低下し,血圧は低めである.意識消失は一過性で,病院到着時は回復していることが多い.
●本ショックに伴う臨床徴候には,目の前が暗くなり意識が遠のく,気持ちが悪い・ムカムカする,冷汗,顔面蒼白,手足の冷え・しびれ,などが多い.
●本ショックでは同じ血液再分布異常性ショックの機序であっても,皮膚症状(蕁麻疹,全身発赤,紅斑),顔面の腫れ,気管粘膜浮腫,息苦しいといったアナフィラキシー様症状がみられない.
B.最初の処置
1ショックの臓器症状 意識状態では意味不明なことを言うなど意識の質の変化にも注意する.自分で名前や年齢をはっきりと言えるかどうか簡単な質問を行う.簡単な指示が入らない,医療者の指示に従わない,不穏状態は,脳灌流低下による軽度の意識障害を示唆する.
2気道確保と酸素投与 呼吸状態,特に呼吸数の低下に注意する.外傷患者で上位頸髄損傷の合併で中枢性の呼吸障害をきたしている時には,気管挿管による気道確保が必要となる.その際に頸椎保護は必須である.
3バイタルサイン・心電図モニター ショック状態では自動血圧計がうまく作動しない場合も多い.手動血圧計による触診法で行い,皮膚の湿潤の有無などを同時に観察できれば有用な情報となる.血圧低下していてモニター上,心拍数50/分前後の洞調律で安定している状況では,神経原性ショックの合併を疑うき
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