A.診療のポイント
●バイタルサインが不安定な場合は,出血性ショックの病態と捉えて,OMI.
O:酸素投与(足りなくないことがわかるまでは最大限投与)
M:モニター装着(動脈血酸素飽和度:SpO2,血圧:BP,心電図:ECG)
I:静脈路確保
ショックの治療を直ちに開始する.
●静脈路確保の際に,血液交差適合試験(クロスマッチ),ヘモグロビン(Hb),ヘマトクリット(Ht),血小板数(Plt),プロトロンビン時間(PT)の採血を行う.
●解剖学的にどの部位の,どのような病変から,どのくらい出血したか把握する.
●既往歴では,特に肝硬変,食道静脈瘤に注意する
●食道静脈瘤からの出血,新鮮吐血,挿入した胃管から血液が引かれた場合は,緊急内視鏡を行う.
●上部消化管出血の可能性がある場合はproton pump inhibiter(PPI)を静注する.
●最終的に患者の診療を担当する診療科とよく相談し,dispositionを決定する.可能な限り,普段の診療の流れ,適応判断に沿った診療を行う方が誤りが少ない.
B.最初の処置
バイタルサインを測定し,不安定な場合は出血性ショック状態と認識し,ショックの治療を開始しつつ,病歴聴取を行い,出血源を推定する.
1バイタルサインの確認とショックの認識
①general appearance,意識レベル,精神状態(生命の危機が迫っているが故に不穏になる場合がある),呼吸回数,SpO2,脈拍,血圧を確認し,顔色,皮膚の色調,紫斑などの凝固障害の徴候がないか観察する.皮膚の色が悪く,発汗し,冷感がある場合は,交感神経が緊張し,末梢血管抵抗が亢進している症状であり,血圧の低下がみられなくとも,ショックと認識する.
②血圧に関して,特に若年者の場合,十分な代償機転が働くため,収縮期血圧は病態が進行しないと低下しないことに注意し,高齢者の場合は,普段の血圧が高い可能性があ