診療支援
治療

出血傾向
bleeding tendency
有井麻矢
(Brigham and Women's Hospital,Harvard Medical School,Department of Emergency Medicine)

A.ER診療のポイント

●ポイントを絞った病歴聴取,診察,スクリーニング検査により,二次止血異常による深部の致死的な出血(気道の血腫,頭蓋内出血,血腫によるコンパートメント症候群,後腹膜血腫)を早期に診断し,適切な治療を行うことが重要である.

●外傷を伴わない出血や,外傷の程度に見合わない出血,外傷後の遅発性の出血,関節出血や軟部組織深部の出血を認めた場合は,出血傾向を疑い,ERでの処置後,必要に応じて血液内科医による精査,フォローを依頼する.

●外傷患者を診察する際は,必ず出血傾向のリスク評価を行う.

●出血傾向は,主に血小板血栓形成による一次止血と,それを強化する凝固系を介したフィブリン架橋による2次止血の異常に分けられる.それぞれのおおまかな特徴を表1に記す.


B.最初の処置

1バイタルサイン

 ショック徴候に注意しながらバイタルサインを測定する.また,低体温は出血傾向の原因となるので,特に外傷患者では注意する.

2病歴聴取のポイント

①外傷や術後,抜歯後の出血傾向,あざができやすい,繰り返す鼻出血,月経過多,不正出血

②既往歴:肝機能障害と腎機能障害(特に透析患者)はともに凝固因子の異常および血小板の数および機能低下の原因となる

③社会歴:アルコール過剰摂取による肝機能障害,血小板減少

④家族歴:血縁者の出血傾向(特に血友病,von Willebrand病)

⑤内服歴

 ・抗血小板薬,抗炎症薬

 ・ワルファリン,特に抗菌薬を併用(ニューキノロン系,マクロライド系,アモキシシリンなど)している場合,PT-INR延長に注意する.

 ・抗菌薬は血小板減少や,長期投与ではビタミンK欠乏の原因になる

3身体所見

①気道閉塞をきたす可能性のある頸部,舌,咽頭,後咽頭の血腫を除外する.

②口腔内,皮膚の紫斑や,皮下組織,筋肉の血腫,関節出血に加え,頭蓋内出血を示唆するような神経学的所見に注意しながら全身の診察を行

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