診療支援
治療

一過性脳虚血発作
transient ischemic attack(TIA)
永山正雄
(国際医療福祉大学教授・熱海病院神経内科)

A.疾患・病態の概要

●脳梗塞の前兆である一過性脳虚血発作(TIA)の定義は,欧米では2002年以降見直され,発作持続時間よりも画像上,急性期脳梗塞所見がないという脳組織の状態を重視した定義に公式に変わった.

●最新の定義は米国心臓病学会(AHA)/米国脳卒中学会(ASA)共同声明(2009)による「脳,脊髄,あるいは網膜の局所性虚血による一過性の神経機能障害で急性期脳梗塞を伴わないもの」であり,神経症候の持続時間を全く問わないものとなった.

●わが国のTIAの定義は,1990年の厚生省研究班の診断基準「神経症状持続時間が24時間以内で,画像上脳梗塞病巣を認めない」が最終である.

●TIAを脳梗塞やRIND(reversible ischemic neurological deficit)と区別するために1960年代半ばに規定された24時間という発作持続時間は過去のものであり,TIAと急性期脳梗塞を同一のスペクトラムでとらえ,直ちに入院急性期治療を開始する.

●メタ解析ではTIA発症後90日以内の脳卒中発症率は15~20%.TIA発症後90日以内の脳梗塞発症例の半数は48時間以内に発症.発症後1日以内の治療開始例は,20日後の治療開始例よりも90日以内の大きな脳卒中の発症率が80%少ない.


B.最初の処置

①一過性の神経機能障害を呈した患者には,緊急に頭部MRI(特に急性期脳梗塞描出に最も優れる拡散強調像)を行い,急性期脳梗塞所見があれば脳梗塞としての入院治療を開始する.MRI上,急性期脳梗塞所見がなくともTIAが疑われれば,入院のうえ,治療を開始する.

②緊急MRI施行が困難な場合は,CTを行い出血性病変がなければ急性期脳梗塞あるいはTIAとしての治療を開始のうえ,可能であれば脳卒中急性期に対応可能な施設に移す.

③緊急MRI・CTともに施行困難な場合は,早急に脳卒中急性期に対応可能な施設

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