A.疾患・病態の概要
●くも膜と軟膜間にある髄液腔への出血である.内因性くも膜下出血の80~90%までが脳動脈瘤破裂による.その他様々な原因によるが,脳動脈解離,脳・脊髄動静脈奇形が特に緊急性が高い.脳内出血,脳室内出血,硬膜下出血を合併することもある.
●最も致命率が高く突然死をきたしうる脳卒中である.来院時心肺停止,あるいは脳幹反射消失のため根治術の対象とならないことも多く,全症例の約半数が死亡する.一方で,治療により神経脱落症状をきたさず社会復帰も期待しうる.転帰を決定づける最大の要因は神経学的重症度であり,初回出血もしくは再出血による脳損傷の関与が大きい.救急搬送症例の50%以上が血圧160mmHgを超え,再破裂の危険が高い.再破裂は救急搬送途上や救急外来でも頻繁にみられ,重症例ほど,初回出血からの時間が短いほど頻度が高い.初療医の役割は,いかにして再破裂をきたさず良い状態で患者を専門医に引き継ぐかに集約される.
●脳動脈瘤が破裂すると急激な頭蓋内圧亢進をきたし,脳灌流圧の低下から意識を消失する.平均体血圧と頭蓋内圧の圧較差が低下すると,破裂部は血栓閉鎖の方向に向かう.いったん止血されると髄液の緩衝作用により頭蓋内圧が低下し,脳循環が改善して意識の回復をみる.破裂部位に形成された血栓はきわめて脆弱で再破裂をきたしやすい.
●くも膜下出血発症に伴い過剰な交感神経緊張(カテコールアミンサージ)が生じ心筋運動障害,不整脈や肺水腫をきたすことがある.延髄の虚血から突然の呼吸停止をきたしうる.くも膜下出血は全身疾患であることを銘記する.
●くも膜下出血は脳卒中全体の6.8%を占める(脳卒中データバンク).日本における年間発症率は10万人あたり約20人で,発症のピークは60歳代にあり男女比は1:2で女性に多い.多発性脳動脈瘤は約20%にみられる.危険因子として家族歴,習慣喫煙,高血圧,過
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