診療支援
治療

かぜ症候群
cold syndrome
相馬一亥
(北里大学教授・救命救急医学)

A.疾患・病態の概念

●かぜ症候群は急性の上気道における炎症性疾患と定義されている.病因はウイルスが大部分を占めるが非感染性因子として寒冷,化学物質吸入,アレルギーによるものがある.

●かぜ症候群は,一般的には軽症で,自然治癒傾向が強い予後良好な疾患であるため,臨床医はこの疾患を軽視しがちである.しかし,有病率から考えると非常に頻度の高いこの疾患は,「風邪は万病のもと」という言葉に象徴されるように,そのマネージメントが不十分であると合併症による重症化をひき起こしたり,またかぜ症状を訴える感冒症候群以外の疾患を見逃すことにつながり,決して軽視することのできない疾患である.

●かぜ症状を訴えるかぜ以外の疾患のなかには,最近報告されている激症型溶連菌感染症など生命も脅かす疾患のあることを忘れてはならない.またある報告では,かぜ症状を訴えて来院した患者の約50%が他疾患によるものであったという.大切なのは100あるいは1,000人のかぜ症状を主訴とする患者のなかから,見逃してはならない疾患をもつ1人の患者を見つけ出し,適切なマネージメントを行うことである.

●かぜ患者の訴えは様々である.列記すると,くしゃみ・鼻水・鼻閉・咽頭痛・嚥下痛などの上気道症状,咳・痰などの下気道症状のほか,発熱・全身倦怠感・筋肉痛・腰痛・頭痛・食欲不振などの全身症状,また悪心・嘔吐・下痢・腹痛などの消化器症状もみられる.


B.最初の処置

①詳細な現病歴聴取,適切な身体的検査の後,症状が軽微の上気道感染のみで高熱もなく,全身状態が良好で明らかに初発の感冒症候群と考えられる場合は,確定診断のための検査は不要であり,対症的な投薬を行う.

②一方,現病歴聴取が不可能なくらいの全身倦怠感・軽度の意識障害・まったく食事がとれない・急激な体重の減少などの症状を伴うかぜ症状,激症型溶連菌感染症ハイリスク群の下肢痛などは他疾患を合併してい

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