診療支援
治療

過換気症候群
hyperventilation syndrome
勝見 敦
(武蔵野赤十字病院・第二救急部長)

A.疾患・病態の概要

●発作性に呼吸困難を伴った過換気により動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)の低下によって生じる多彩な症状の症候群(表1).過換気は器質的疾患によっても起こるが,一般には,主に心理的要因により生じたものを過換気症候群と呼んでいる.

●若い女性に多く発生し,男性の2倍の発生頻度である.過去に何回か同様な発作の既往がある場合が多い.

●多くは発作の持続時間は30分~1時間程度である.

●心理的な要因で肺胞過換気を呈するメカニズムは,大脳皮質から行動性呼吸調節系を介して呼吸筋へ指令が出され,換気を増加させると考えられている.

●過換気を呈する器質的疾患を鑑別することが重要である.

●不安により一層,過換気となり症状を悪化させるため,本疾患への理解と不安を解消させることが大切である.

●ペーパーバッグ療法やジアゼパム(セルシン®)などの鎮静薬を使用する際には,低酸素血症の発生に十分に注意をする.


B.最初の処置

1バイタルサインの確認と病歴聴取

①「息ができない」と強い呼吸困難を訴え頻呼吸を呈しているが,顔色が良く,チアノーゼがないことで,本症候群を疑うことができる.しかし,器質的な疾患を除外するため,気道・呼吸・循環の評価を確実に行い,バイタルサインをチェックする.

②「突然の呼吸困難」に関しては,特に緊急処置を必要とする窒息などの上気道の閉塞などがないか,ただちに確認する.

2不安を取り除く

①「息ができない」などの死への不安,「手がしびれる」「体が動かない」「意識がもうろうとする」など急激な症状の出現・進行により,精神的に混乱をきたしていることが多い.まず,不安を取り除くことから始まる.そのためには「呼吸ができないこと」「手がしびれる」などの症状に理解と共感を示したうえで,本症候群が重篤な疾患でないことを説明する.

②呼吸については口をすぼめて呼吸すること,あるいは鼻を通して呼吸を

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