A.疾患・病態の概要
●狭心症は心筋への酸素需要に供給が不足して生じる.冠動脈の器質的な狭窄では,冠動脈造影検査でアメリカ心臓協会(AHA)の分類により狭窄度が75%以上,内腔断面積の狭窄率が60%以上になると心筋虚血を生じる.症状が,①胸骨裏あたりの不快感を,②運動や精神的なストレスで生じ,③安静やニトログリセリン(ニトロペン®薬)服用により軽快する,の3つの特徴を有すれば典型的な狭心症と考える.これらのうち2つのみを満たせば,非典型的な狭心症の疑いとなる.
●安定狭心症の重症度分類は,発作を生じる閾値によるCanadian Cardiovascular Society(CCS)の狭心症分類が用いられる(表1図).冠動脈のトーヌスが亢進する朝にのみ発作を生じる場合は,クラスⅡとなる.また,新規発症でクラスⅢ以上のものが,不安定狭心症に分類される.
B.最初の処置
病歴から安定狭心症と考えられても,冠動脈の病態が急性冠症候群(acute coronary syndrome:ACS)である場合もある.ACSの鑑別と急変の可能性への対応を10分以内に行う.
1バイタルサインや酸素飽和度の評価
酸素飽和度が低下していなくても,ACSが疑われれば鼻カニューレ4L/分の酸素を投与する.
2末梢静脈路を確保し心筋障害マーカー,電解質,血算,生化学検査を提出
トロポニンだけでなくCPK,CK-MB,LDH,ASTなども提出する.好酸球増多症が冠攣縮の原因である場合もあり,白血球分画も提出する.初回の心筋逸脱酵素が陰性の場合でも,病歴からACSなどが疑われる場合には経時的にフォローする.
3心電図モニター
ST-T変化だけでなく,非持続性心室頻拍は状態が不安定であることを示唆する.
4病歴聴取と診察
①病歴:既往歴や冠危険因子とともに胸痛症状の部位,性状,発生状況,持続時間,程度,冷汗や嘔気の有無,増悪因
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