A.疾患・病態の概要
●一般臨床で対応が必要となる主な頻拍性不整脈は,①心室頻拍(VT),②心房細動頻拍(AF tachy),③心房粗動頻拍(AFL tachy),④発作性上室頻拍(PSVT)である.
●救急現場で頻拍性不整脈に遭遇した場合,心電図での確定診断から治療という通常の流れでは初期対応でつまずくことが多く,むしろ症候としての頻拍への対応というアメリカ心臓協会(AHA)のACLSアプローチが勧められる.
B.最初の処置
(図1)図
①バイタルサインを取りつつ的確な病歴と身体所見で初期状態を判断する.例えば,持続する胸部不快や呼吸困難,苦悶様表情や冷や汗,意識障害や血圧低下を伴うような場合は不安定な状態である.心拍数が130拍/分で他のバイタルサインの悪化が認められず,症状も動悸のみで身体所見も特に問題ない場合は,安定していると判断できる.
②頻拍患者に対する最初の処置として,(1)心電図・酸素飽和度モニター装着,(2)酸素投与(考慮),(3)生理食塩水や乳酸リンゲル液薬など輸液ラインの確保を行い,除細動器を準備する.
③患者の不安定な状態が頻拍によるものと判断できれば,ただちに同期電気ショックを施行する.心拍数が200拍/分以上の非常に速い頻拍の場合はVFに移行する危険が高いため,患者の状態にかかわらず不安定頻拍として可及的速やかに電気ショックを施行する.患者の状態が安定していると判断した場合は,12誘導心電図,採血(血算,生化学,血液ガスなど),胸部X線,可能であれば心エコーなどを施行し,病態の把握と心電図診断を進める.
C.病態の把握・診断の進め方
心電図モニター上で頻拍を認めた場合,心停止に至る可能性が高く,ただちにコントロール(治療)する必要がある頻脈かを判断する.心電図モニター上での評価項目は,1QRS波の幅と形態,2心拍数とリズムである.
1QRS波の幅と形態
①幅が広い(
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