A.疾患・病態の概要
●急性心不全とは,種々の心臓病や心臓以外の疾患が原因となり,数時間から数日程度の経過で発症し,最終的に循環器系の破綻を生じ,低心拍出量状態や低酸素状態を惹起し,有効な初期治療が行われないと急速に生命に関わる重篤な状態に陥る疾患群である.主な原因疾患を表1図に示す.
●病態としては,主に左心不全または右心不全による分類があるが(表2図),最近ではこの病態をさらに,①急性非代償性心不全(新規または慢性心不全の急性増悪),②高血圧性急性心不全(高血圧を伴う心不全),③急性肺水腫(著明な自覚症状と低酸素血症で発症),④心原性ショック(ショックを呈する),⑤高心拍出量性心不全(甲状腺機能亢進や貧血などに伴う),⑥急性右心不全(右心不全を全面として発症)に分類することがある.発症のきっかけとなる主要な原因疾患として,急性冠症候群(上記①,③,④),心房性不整脈(心房細動,心房粗動)(①~⑥),弁膜症(①,③~⑥),感染症(①,⑥),などが挙げられる.感染性心内膜炎以外でも気道感染症などを契機に心不全は増悪する.これらの患者の基礎疾患として,冠動脈疾患,高血圧症,心房細動,糖尿病,弁膜症,腎不全,拡張型心筋症,慢性閉塞性肺疾患,甲状腺機能亢進症,貧血などが認められる.また,各病態の血行動態的特徴を表3図に示した.
B.最初の処置
呼吸困難,チアノーゼ,低血圧,ショックを呈する患者の場合,まず急性心不全を疑う.この場合,直ちに以下の対応が重要となる.
1体位 Fowler位(頭部挙上位)を原則とする.起坐呼吸時は,安易に臥位にしない(左心不全が増悪し,肺水腫を惹起する).
2酸素投与 症状が軽度場合は,鼻カニューレ2~3L/分より開始するが,状態により適宜増量.5L/分以上で酸素化が保てない場合は,マスクに切り替え,3~5L/分から開始し,10L/分まで増量可能であるが,酸素化
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