A.疾患・病態の概要
●高血圧性緊急症は,単に血圧が非常に高いだけの状態ではなく,血圧の高度上昇(多くは180/120mmHg)によって,脳,心臓,腎臓,大血管などの標的臓器に急性の障害を生じ進行している病態である.高血圧性脳症,急性大動脈解離を合併した高血圧,肺水腫を伴う高血圧性左心不全,高度の高血圧を伴う急性冠症候群(急性心筋梗塞,不安定狭心症),褐色細胞腫クリーゼ,子癇などが含まれる(表1図).
●血圧が高度であっても,臓器障害の急速な進行がない場合は「高血圧性切迫症(hypertensive urgencies)」と称される.
B.最初に行う処置
日常の診療でも遭遇する頻度が多く,時に致死的となるため,迅速な診断と適切な初期治療が不可欠である.高度の高血圧(多くは血圧180/120mmHg以上)を認め,かつ頭痛や嘔吐を含む脳神経症状を認める場合や,胸背部痛や呼吸困難をはじめとする心血管疾患を想起しうる症候を呈する場合は本疾患を考え,迅速に診療を進める(表2図).
C.病態の把握・診断の進め方
1バイタルサイン
①血圧,脈拍数,呼吸数,体温,酸素飽和度などのバイタルサインの評価は,病態の把握だけでなく,原因疾患の鑑別にも有用である.血圧は必ず両側で測定し,明らかな左右差を認める場合は急性大動脈解離の合併を疑う.
②また,心電図モニターにより,不整脈やST-T変化の有無を評価し,心不全や虚血性心疾患合併の有無を鑑別する.
2現病歴・既往歴の聴取
迅速かつポイントを絞った現病歴および既往歴の聴取は,診断の有用な手掛かりとなる.
1脳神経症状 頭痛,悪心・嘔吐など頭蓋内圧亢進による症状や,片麻痺,知覚障害,構音障害,視覚障害などの巣症状の有無を確認する.特に,発症時間を確認することは脳梗塞患者の血栓溶解療法適応の有無を判断するうえで非常に重要である.
2胸部症状 胸痛,背部痛,呼吸困難などの症
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