A.疾患・病態の概要
●症状はあっても,内視鏡検査上,食道粘膜に炎症所見が認められないことがあり,胃内容物が食道内に逆流することにより臨床症状や合併症を生じた病態を総称して胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease:GERD)と呼ばれている.GERDは,①胸やけや呑酸などの定型的な自覚症状,②下部食道粘膜のびらん潰瘍などの食道粘膜傷害のいずれか,あるいは両方があるものと定義される.そして,内視鏡検査により食道粘膜傷害が明らかなものを逆流性食道炎(erosive GERD),食道粘膜傷害が明らかでないものを非びらん性胃食道逆流症(non erosive reflux disease;NERD)に分類される.
●GERDの定型的臨床症状は胸やけ症状と逆流感であるが,これら症状は内視鏡検査上の粘膜傷害の重症度,食道内pHモニタリングによる胃酸逆流の程度とは相関しない