A.疾患・病態の概要
1発症機序
●胃・十二指腸潰瘍は,昔から「No acid No ulcer」(酸のないところに潰瘍はできない),といわれていた.胃酸が発症に必須で,かつ中心的役割を果たしており,胃酸による消化作用によって潰瘍が形成されると考えられていたことから,消化性潰瘍(peptic ulcer)といわれてきた.しかし,Helicobacter pylori(H.pylori)の発見によって,消化性潰瘍の発症に中心的役割を果たしているのはH.pyloriであって,必ずしも胃酸ではないことが明らかになってきた.
●現時点では,十二指腸潰瘍においては,H.pyloriによって幽門部胃炎が生じ,その結果,幽門部粘膜のガストリン産生細胞が刺激されて高ガストリン血症になり胃酸分泌が亢進,さらにH.pyloriが十二指腸球部の胃上皮化生部に生着し十二指腸の酸分泌抑制機構を障害する,この2つの機序によ