A.疾患・病態の概要
●過敏性腸症候群の発生率は国・地域によって異なるが,欧米では8~20%の成人がその症状を呈しているともいわれている.また,男性より女性の方が多いとされている.小児過敏性腸症候群の患者の発生は,年齢とともに増加する.
●「炎症や潰瘍など器質的異常がないにもかかわらず,腹痛,便秘・下痢などの症状が慢性的に持続する状態」である.原因は不明であるが,精神的な不安や過度の緊張が引き金になることから,心理的要因が関与することが多い.
●IBSの病態は,消化管運動異常,消化管知覚過敏,心理的異常の3つからなる.消化管運動異常は刺激に対しての小腸,大腸の運動亢進であり下痢がその症状となる.消化管知覚過敏は腹痛や腹部不快感として発症する,心理的異常としては,抑うつ・不安などが代表的症状である.
●病因として,心理的要素,神経伝達物質,炎症,内臓の過敏,消化管運動の異常,などの複合的要素が考えら