診療支援
治療

食中毒
food poisoning
金子一郎
((独)国立病院機構京都医療センター・救命救急センター長)

A.疾患・病態の概要

●食中毒の発生率は年間1,000~3,000件程度,患者数は2万人から多い年で5万人程度,死者は年間数人から20人程度である.

●食中毒は原因となる因子を経口で摂取することによって起こる.原因食品別では,貝類,フグ,肉類,キノコなどが多く原因食品は多岐にわたる.症状は下痢や嘔吐や発熱などであるが原因により様々である.発生件数で見ると,カンピロバクター食中毒・ノロウイルス食中毒,サルモネラ菌属食中毒が多い.腸管出血性大腸菌食中毒は発生頻度が少ないものの,症状が重篤化するものもあり注意を要する食中毒である.

●食中毒の原因には以下のものがある.

 ①細菌性食中毒およびウイルス性食中毒,②自然毒食中毒,③化学性食中毒


B.最初の処置

①細菌性食中毒,ウイルス性食中毒では,急性腸炎の初期治療に準ずる.原因物質により特異的な症状を呈するので注意が必要である.一定の潜伏期後に,悪心,嘔吐,腹痛,下痢などの症状を呈するのが一般的であるが,原因の食材あるいは病因により多彩な症状を呈する.各病因に関する症状は,疾患・病態で述べる.基本的に,バイタルサインの測定,身体所見の把握,血液検査,静脈路確保,必要に応じて心電図検査,体重測定,胸部X線撮影など全身管理に必要な検査を行う.

②発熱の有無,神経症状の有無,不整脈,意識障害,凝固異常,臓器不全などについて,その有無を把握し対応する.原則,輸液療法により脱水や電解質を補正,食事制限を行う.止痢薬の投与は,原因物質を腸管内に留める可能性があり,原則使用しない.

③自然毒,化学物質が原因となる場合は原因物質の特定,吐物や,血液の保存などを行う.中毒情報センターなどの情報を活用する必要がある.


C.鑑別のための知識

1食中毒の病因の分類

1細菌性食中毒およびウイルス性食中毒

➊細菌性食中毒:食品の製造工程や保存,調理過程において付着した細菌が増殖し毒素

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