A.疾患・病態の概要
●イレウスとは腸管が内腔または腸管外の原因により,内腔の狭窄や閉塞をきたした状態で,腸閉塞ともいわれる.イレウスには種々の分類法がある1,2).腸管虚血合併率の高さにより,機械的,機能的イレウスを分類し,代表的疾患を表1図にまとめた.
●絞扼性イレウスは,腸管内腔の閉塞に続く種々の病態と腸管への血流障害による腸管虚血が特徴である.病態は急激に増悪し,腹膜炎,敗血症(sepsis)/敗血症性ショック(septic shock),DIC(播種性血管内凝固症候群),多臓器不全へと容易に進行する.そのため,絞扼性イレウスはもちろん,絞扼へ進行しつつある状態を早期,的確に診断し手術治療を実施することが重要であり,手術時期の遅延は治療成績不良に直結する.しかし,絞扼を示す明確な指標は未確立である.
●イレウスの原因は多岐にわたるが,原因によらず多くの症例で絞扼性イレウスへ進行する可能性があることを念頭に置く.絞扼性イレウスでショック状態など重篤化した症例の診断は臨床所見や検査所見から可能であるが,早期の絞扼例や絞扼へ進行しつつある状態での早期診断は困難を極める.
●絞扼性イレウスの病態の特徴は,腸管内腔の閉塞と腸管血流の障害である(図1図).
1腸管内腔閉塞
①閉塞部より口側腸管は内容物の通過障害により拡張し,内圧上昇から嘔吐をきたし,体液の体外喪失をきたす.重症化すると非出血性循環血液量減少性ショックに陥る.
②拡張腸管の腸液吸収能は障害され,腸液分泌と相まって腸管内容量はさらに増大し,内圧が高まり,腸管粘膜が障害される.体液はサードスペースへ移動し貯留して血管内容量は減少する.いわゆる脱水をきたす.
③閉塞により拡張した腸管内で細菌の異常増殖が起こり,嘔吐物は次第に糞便様となる.腸管粘膜障害も併発し,bacterial translocationをきたす.
④脱水状態に続いて,