A.疾患・病態の概要
●ヘルニアとは先天的・後天的な原因で生じた組織の間隙から臓器や組織が脱出している状態を指す.生体の様々な部位で発生する.体表から見える外ヘルニアと体表から見えない内ヘルニアに分けられる.内ヘルニアには食道裂孔ヘルニア,網嚢孔ヘルニア,横隔膜ヘルニア,傍十二指腸ヘルニア,盲腸窩ヘルニア,S状結腸間膜ヘルニアなどがあるが,本項では腹部の外ヘルニアについて記述する.
●腹部でみられる外ヘルニアには鼠径部ヘルニア,閉鎖孔ヘルニア,腹壁ヘルニアがある.鼠径部ヘルニアには外鼠径ヘルニア,内鼠径ヘルニア,大腿ヘルニアがあり,腹壁ヘルニアには腹壁瘢痕ヘルニア,白線ヘルニア,臍ヘルニアがある.
●腹圧がかかると腸管などヘルニア内容が腹壁から皮下に脱出し,皮下の膨隆として観察される.この際の症状は全くない場合もあるが,軽い不快感,痛みを感じることもある.
●鼠径ヘルニアは成人でも頻度が高いが,小