診療支援
治療

痔疾,脱肛
hemorrhoid / prolapse of the anus
村田宣夫
(帝京大学教授・医療技術学部)

A.疾患・病態の概要

 痔疾には内痔核,外痔核,裂肛,痔瘻がある.脱肛は内痔核の第3度,4度の病態である.それぞれに特色ある症状と合併症があり,治療法は異なる.

●内痔核は肛門管歯状線より内側粘膜下の肛門静脈叢が静脈瘤化したもので,肛門側から見て3時,7時,9時方向に好発する.出血,疼痛,脱出(脱肛)が主要3症状であるが,疼痛は軽いことが多く,かゆみを訴えることがある.ただし脱出して,肛門括約筋で絞扼され,痔核嵌頓をきたせば血流障害から激しい疼痛を生じる.

●外痔核は肛門管歯状線より外側粘膜下の肛門静脈叢が静脈瘤化したものである.症状として出血は少なく,血栓を生じた際の疼痛が激しく,肛門痛を主訴に来院する.

●裂肛は肛門管に生じた裂創で,おそらく大きな便塊が通るときに肛門管を圧迫して外傷(裂肛)をきたしたものと考えられている.したがって硬い便塊で生じることが最も多いが,液状便でも生じることがあり,近年は裂肛の病因として,肛門管静止圧の上昇と肛門管の虚血が考えられている.いずれにせよ裂肛をきたすと激しい疼痛と出血を生じる.

●痔瘻は直腸下部や肛門管と肛門周囲皮膚との間に後天的に瘻孔が作られた疾患である.肛門陰窩からの感染が肛門周囲皮下に広がると肛門周囲膿瘍をきたす.症状としては同部の疼痛,圧痛,排膿である.


B.最初の処置

 内痔核,外痔核,裂肛,痔瘻の4種の痔疾のどの疾患かをまず特定する.

1問診

 問診は重要である.痔疾患者の救急外来受診の動機としては,大きく分けて疼痛か出血である.現病歴では症状の始まり(特に排便との関連),疼痛の程度,出血の程度,現在の状況(増悪しているか,軽快しているか),排便習慣,過去に指摘された肛門の病気,その他の既往歴などを聞いた後に,身体診察に移る.

2身体診察

①身体診察では視診,触診,直腸指診,肛門鏡検査といった肛門診察に最も適した体位を取ってもらう.砕石位や

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