A.疾患・病態の概要
痔疾には内痔核,外痔核,裂肛,痔瘻がある.脱肛は内痔核の第3度,4度の病態である.それぞれに特色ある症状と合併症があり,治療法は異なる.
●内痔核は肛門管歯状線より内側粘膜下の肛門静脈叢が静脈瘤化したもので,肛門側から見て3時,7時,9時方向に好発する.出血,疼痛,脱出(脱肛)が主要3症状であるが,疼痛は軽いことが多く,かゆみを訴えることがある.ただし脱出して,肛門括約筋で絞扼され,痔核嵌頓をきたせば血流障害から激しい疼痛を生じる.
●外痔核は肛門管歯状線より外側粘膜下の肛門静脈叢が静脈瘤化したものである.症状として出血は少なく,血栓を生じた際の疼痛が激しく,肛門痛を主訴に来院する.
●裂肛は肛門管に生じた裂創で,おそらく大きな便塊が通るときに肛門管を圧迫して外傷(裂肛)をきたしたものと考えられている.したがって硬い便塊で生じることが最も多いが,液状便でも生じることがあり,