診療支援
治療

尿路感染症
urinary tract infection
武内 巧
(関東労災病院・泌尿器科部長)

A.疾患・病態の概要

●尿路感染症は通常は尿路,つまり腎・尿管・膀胱・尿道に発生する細菌感染症をいう.やや広義にとらえれば尿路における非細菌性,例えばウイルス性,真菌性,結核菌の感染症や精巣,精巣上体,精管,前立腺といった性器に生じる感染症を含んで考えてよい.

●大まかにいえば尿路性器感染症の対応は,発熱しているか否か,また尿路性器に基礎疾患が存在するか否かで決定していけばよいであろう.


B.最初の処置

①発熱があり感染症を疑う患者が来院した場合には感染源の検索を行う.一般に尿路は呼吸器と並んで感染症の原因となりやすい.まず尿路性器感染症が病態の主因であるかどうかの見極めをする.

②特に高齢者では膿尿など軽度の尿所見は元来存在しやすいが,それだけで尿路感染症が主体となる病態であると即断するのは早計である.肺炎など他の重篤な感染症が実は症状の本態であったということはしばしば経験されることである.軽度の尿所見だけで尿路感染症が第一の問題点であると決めつけないことが重要である.

③尿路感染症に起因する敗血症(urosepsis)の死亡率は,呼吸器や消化器系に起因する敗血症の場合よりも低い.また何らかの理由により膀胱カテーテルを留置されている患者は尿路性器感染症を起こしやすい.敗血症を起こしている尿路性器感染症は致死的となる可能性があるので血圧,脈拍,呼吸数などバイタルサインに注意する.

④近年は高齢者あるいは糖尿病や免疫疾患,腎疾患,肝疾患など感染に対する抵抗力の低下した患者も増加しているので,尿路性器感染症の予想外の重篤化の可能性に注意する必要がある.


C.病態の把握・診断の進め方

 有熱性の尿路性器感染症は急性腎盂腎炎,急性前立腺炎,急性精巣上体炎である.膀胱炎,尿道炎では発熱しないことに注意する.尿路性器感染症を疑う場合は身体所見,検査所見,画像所見から炎症の局在部位を診断する.

1確定診断に

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