診療支援
治療

医療従事者のスタンダード・プリコーション
standard precautions for healthcare workers
櫻井 淳
(日本大学・救急医学系救急集中治療医学)
丹正勝久
(日本大学主任教授・救急医学系救急集中治療医学)

A.スタンダード・プリコーションとは

●米国疾病管理予防センター(CDC)は,血液媒介感染から医療従事者を防御するための「普遍的予防策:universal precaution」と,潜在的感染性がある全ての分泌物や排泄物等を扱う際に手袋を着用する「生体物質隔離:body substance isolation」という2つの感染対策の考え方を統合・発展させた考え方をスタンダード・プリコーションとして勧告を出した.この内容は「医療現場での感染性病原体の伝播予防のための隔離予防策ガイドライン2007」に述べられている.

●血液,体液,分泌液,汗以外の排泄物,無傷ではない皮膚や粘膜は,伝播しうる感染性病原体をもっている可能性がある.したがってスタンダード・プリコーションは感染状況にかかわらず,あらゆる医療現場で全ての症例に対し行うべきである.

●スタンダード・プリコーションを医療現場で行うために必要なのは,手指の消毒,個人防護具(personal protective equipment:PPE)の装着,汚染された患者治療器具の取り扱い,環境管理,布類や洗濯物の扱い,針や他の鋭利なものの取り扱い,患者の蘇生,患者の配置,呼吸衛生/咳エチケット,安全な注射の手技,特殊な腰椎穿刺時の感染制御の実施である(表1).

●スタンダード・プリコーションのみで病原体の伝播を防ぐことができない場合は,感染経路別予防策,即ち接触感染予防策,飛沫感染予防策,空気感染予防策をとる必要がある.


B.手指の消毒

①手指の消毒は感染性病原体の伝達を明らかに減少させる.石鹸で洗ったり,アルコール入りのジェルなどを使用して手指の消毒を行う.明らかに手に汚れがみられない場合は,アルコール入りジェルなどのほうが石鹸で水洗いするより便利で有用である.

②血液・体液・分泌物・排泄物・汚染された物品に触れた時,手袋を外した直後,患者の

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