診療支援
治療

呼吸障害
dyspnea
清水直樹
(東京都立小児総合医療センター・救命・集中治療部集中治療科医長)

A.小児ならではのポイント

●小児において呼吸障害は多くみられ,心肺停止の原因として重要である.小児の心肺停止では,その原因として心停止が直接的な原因となることは比較的少なく,呼吸停止に引き続いて心停止になることが多い.小児の心肺停止における心室細動・無脈性心室頻拍は,院内心肺停止の10~30%程度,院外心肺停止の10~20%程度といわれている.

●小児外傷においても,その6割で頭部外傷を合併し,頭部外傷による心停止の多くは外傷自体によるものよりも,頭部外傷による呼吸障害が進み,低酸素から徐拍,心肺停止へと至ることが多いといわれている.疾病のみならず外傷においても,この呼吸障害の有無・程度を迅速に把握し,心停止を含めた悪化を未然に防止することが,小児ならではのポイントとなる.

●いったん心停止になった小児の転帰は不良であるが,呼吸停止だけの状態で発見され,心停止に至る前に治療が開始された場合の救命率は70%以上とされている.したがって,小児の心肺停止に直結する呼吸不全やショックに早期に気づいて速やかに対応することが,救命率改善に欠かせない.


B.最初の処置

①初期評価の段階で,全身状態不良,チアノーゼ,頻呼吸,呼吸パターン異常などから呼吸障害の存在を疑った場合は,速やかに酸素投与とモニタリングを開始し,人員を確保する.ここで必要があれば,心肺蘇生を開始する.

②二次評価に進める状況であれば,引き続き,呼吸障害の重症度評価を含めた鑑別診断に進む.


C.病態の把握・診断の進め方

1鑑別診断

1病態診断

①小児の呼吸障害が進行して著明な低酸素になれば誰でも気づきうるが,酸素化や換気が障害される前の早期の段階で呼吸障害の存在に気づく必要がある.これにより早期に治療的介入を図ることができ,心肺停止はじめ,深刻な状態に進展することを未然に防止できる.

②呼吸障害が進行し,酸素化もしくは換気が障害され,酸素投

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