診療支援
治療

クループ症候群
croup syndrome
船曳哲典
(藤沢市民病院・こども診療センター長)

A.小児ならではのポイント

●クループ症候群の主要症状は吸気性喘鳴であり,その本態はウイルス感染による声門下の気道狭窄と考えられている.小児では喉頭腔が狭小であり,また声門下腔の粘膜下組織が粗で,血管やリンパ管が豊富なために感染により浮腫が増強し,呼吸障害をきたしやすい.クループ症候群は仮性クループ,喉頭気管炎とほぼ同義である.

●クループ症候群の特徴は嗄声,吸気性喘鳴,犬吠様咳嗽(barking cough)であり,診断は比較的容易である.特有の咳嗽はオットセイの鳴き声(seal's bark),金属性咳嗽(brassy barking)と表現されることもある.発熱は軽度のことが多く,平熱のこともある.好発年齢は生後6か月から3歳で,男女比は1.4:1で男児に多いとされている.生後6か月未満のクループ症候群はまれであり,吸気性喘鳴を認めた場合は先天性喘鳴や血管輪など先天的な異常を疑う.

●原因となるウイルスはパラインフルエンザウイルス1型・3型,RSウイルス,ライノウイルスなどである.インフルエンザウイルス感染によるクループ症候群は重症化することがある.秋から冬にかけて発症のピークがあり,夜間に呼吸症状が悪化することが多い.


B.最初の処置

①診察開始前の緊急度判断(トリアージ)が重要である.呼吸数は緊急度を知る良い手がかりになる.年齢別の標準的呼吸回数から大きく逸脱した多呼吸があれば,呼吸困難が示唆される.顔色,陥没呼吸やチアノーゼの有無,意識状態,SpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)も重要な情報である.緊急度が高いと判断した場合は,ただちに酸素を投与し,優先的に診察する.

②クループ症候群では興奮や啼泣により呼吸状態が悪化するため,呼吸困難で患者が不穏状態になっている場合には医療的介入を最小限にとどめ,保護者の庇護下で安静を保つ.診療開始後も呼吸状態の安定を優先させ,疼痛を伴う静脈

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