A.小児ならではのポイント
●心筋炎は心臓の筋肉に種々の原因により炎症が起こることで発症する.ウイルス性心筋炎では発症に関し免疫的な関与が考えられている.心筋細胞の障害は心機能障害を起こし,心不全に陥る.臨床的には軽症例や症状を伴わないsubclinicalな症例も実際には多いと考えられている.
●心筋炎の病型には急性と慢性的な経過をたどるものがあるが,一般的に小児は成人と異なり,多くの場合,急性の発症や劇症型心筋炎である.心筋炎の原因には感染,毒素,自己免疫疾患などによるものがある.小児における心筋炎は感染によるものが最も多いが,コクサッキーBをはじめとするエンテロウイルスやアデノウイルス,最近では重症RSウイルス感染症でも起こることが知られており,ウイルスに起因するものが多い.
●小児では以下に述べるような特徴に留意し,診断・治療を進めていくことが大切である.
①基礎的心疾患がなく,ウイルス感染症に引き続き急性に発症する心不全を見た場合,心筋炎を疑うことが大切である.
②初期の臨床像は多呼吸,呼吸困難など呼吸器疾患に間違われやすく注意する.また経口摂取不良や腹痛,消化器症状から脱水と間違われ,急速輸液により症状が悪化する場合があり,注意して輸液を行う.
③乳児では哺乳力低下,嘔吐,傾眠状態,ショックなど急激に発症することがある.
④心筋炎を疑ったら,胸部X線,心電図,心エコー検査を行う.
⑤重篤な循環不全や不整脈を伴うリスクがあるためモニターを行い,集中治療室で管理する.重症例では人工呼吸や体外式補助循環を行う.
B.最初の処置
症例を提示し急性心筋炎の処置を述べる.
3歳,男児.来院7日前から38℃台の発熱があり,嘔吐や下痢があった.歩行は可能であったが,座っている時にばたっと倒れ,起こしてみると口唇にチアノーゼがあり,ぐったりしていたので病院を受診した.診察時不整脈があり,肝腫大もあ
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