診療支援
治療

眼科救急
ophthalmic emergencies
坂上憲史
(さかがみ眼科・皮膚科院長)

A.診療のポイント

●一般的に眼科医は細隙燈顕微鏡や眼底倒像鏡などの器具を駆使して診断・治療を行っているため,それらが使用できない救急外来での診療はきわめて限定的なものとなる.

●しかし,限られた情報からもある程度の診断は可能であり,少なくとも今晩中に眼科医のいる地域の中核病院に行ってもらう必要があるのか,それとも翌日の受診でかまわないのかの判断をしなければならない.


B.最初の処置

1眼科受診歴などの病歴聴取

 コンタクトレンズを使用しているのか,緑内障の急性発作に注意するように眼科で言われたことがないかなど,眼科受診歴を確認することが診断の手助けとなることも多い.

1コンタクトレンズの使用

①現在,コンタクトレンズ(CL)の約90%をソフトコンタクトレンズ(SCL)が占めている.SCLはハードレンズに比べて異物感が出にくいため,救急外来を訪れるほどの強い眼痛がある場合は重篤な角膜障害を生じていることが多い.SCLには,使い捨てタイプと通常のタイプがあり,使い捨てタイプの中にも毎日使い捨てるものと,毎晩消毒液につけて2週間から1か月で使い捨てるタイプのものがある.CLによる角膜障害は,使い捨てタイプを連続装用していたり,洗浄や消毒が不十分であったりなどCLの使い方に問題があることが多いが,救急外来でそれを責めても仕方ないので,まずは局所麻酔薬を点眼して痛みを取り除く.

②CLを紛失あるいは破損して,CLが眼の裏にまわるのではないかと心配して患者が来院することもあるが,眼球の構造上CLが結膜嚢より裏に移動することはない.肉眼で結膜嚢内のCLを見つけることは困難なので,翌日眼科を受診してもらう.

2緑内障の既往

①眼の中では常に眼房水が産生されており,角膜と虹彩の間にある隅角を通って静脈へ還流している.もともと隅角が狭い患者では,瞳孔が開くことを契機に隅角が閉塞してしまうことがある.房水が産生さ

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