外傷診療における最大の目標は防ぎえた外傷死(preventable trauma death:PTD)の回避である.その目標達成のためにはまず,自施設での外傷診療における対応能力を熟知して診療にあたらなければならない.もし,その限界が明らかであれば,外傷診療に長けた,より高次の医療機関へ転送する必要がある.転送の判断と安全な病院間搬送を成しうる技量を要求される.外傷診療における対応能力は施設によって様々であり,一律に規定することは難しいが,ここではその転送基準の例を挙げ,解説する.
A.転送基準の例
表1図に示したアメリカ外科学会外傷委員会(American College of Surgeons Committee on Trauma:ACSCOT)の基準は,迅速な転送を行うためのもので絶対的なものではなく,自施設の対応能力に応じて柔軟に対処するのがよい.
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