診療支援
治療

顔面外傷
facial injuries
武山直志
(藤田保健衛生大学教授・救命救急医学)

A.病態

●最も外傷を受けやすい部位の1つである.

●血流が豊富で出血量が多く出血性ショックの原因となる.

●気道閉塞を生じることがある.

●気道確保が困難なことがある.

●頭蓋内,頸部など顔面以外の損傷を合併しやすい.

●神経,耳下腺管,涙道,眼球,眼瞼などの顔面重要組織の損傷を合併しやすい.

●髄膜炎,副鼻腔炎を合併しやすい.

●機能的・審美的後遺症を残しやすい.


B.初期診療(重症度判断)

1初療室で

1primary survey

①救急隊からの依頼内容でdifficult airway(気道確保困難)が疑われる場合はあらかじめ気管支鏡,外科的気道確保(後述)の準備を整えておく.顔面外傷の派手さに惑わされずにprimary surveyを的確に行う.同時に20Gより太い留置針で血管確保を行い,採血も行う.

②気道閉塞が疑われる際には,まず確実な気道確保を行う.呼吸状態を悪化させる原因としては,気道への血液・分泌物貯留,歯牙の脱落,中枢神経障害による舌根沈下,上・下顎骨骨折による軟部組織の転位・支持力低下による舌根沈下,口腔内・上気道の血腫・浮腫,胸部外傷の合併,気管・気管支損傷などがあり,原因に応じた適切な処置を行う.

③最も簡便な方法はヤンカーのような太いサクションチューブを用いて血液,吐物を吸引,除去する.次いで頸椎損傷の可能性を考慮して頭部後屈は行わずに下顎挙上もしくは下顎引き上げを試みる.用手的気道確保では不十分な場合には,気管挿管,または外科的気道確保を躊躇せずに行う.

④顔面外傷の程度によりマスクによる用手換気が可能か否か,2横指以上の開口が可能か否か,頸椎損傷の可能性が高いか否かを確認してから,筋弛緩薬,鎮静薬を投与すべきである.

⑤気管支鏡を用いた挿管は,出血による視野不良,体動のため不成功に終わることが多い.経口・経鼻気管挿管が不成功もしくは禁忌の場合には外科的気道確保に踏み切る

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