診療支援
治療

爆傷
blast injury
小井土雄一
(国立病院機構災害医療センター臨床研究部長・救命救急センター部長)

A.病態

●爆傷は複数の病態により生じる.1次損傷から5次損傷に分類できる.

●1次損傷は爆圧(衝撃波)により生じる.衝撃波は密度の高い物体に衝突し跳ね返り,元の衝撃波と重なりさらに大きな衝撃波となることもある.衝撃波は体内においては液体から気体に抜ける際に大きなエネルギーを放出するため,空気を含んだ臓器が損傷されやすい.最も多いのは鼓膜破裂であり,鼓膜破裂があれば衝撃波を受けた指標となる.1次損傷は体表所見がないのが特徴で,注意が必要である.発生する外傷としては,鼓膜損傷,眼球損傷,外傷性脳損傷,爆傷肺,消化管損傷などが考えられる.

●2次損傷は爆発により生じた飛散物が身体に当たることによる損傷であり,主に鋭的損傷,穿通性損傷である.

●3次損傷は爆風により身体が飛ばされ地面などに叩きつけられたり,倒壊物により下敷きになることにより生じる損傷であり,主に鈍的損傷である.発生する外傷としては,四肢の骨折・離断,頭部外傷,胸腹部外傷,下敷きになった場合は,外傷性窒息,クラッシュ症候群,コンパートメント症候群などが考えられる.

●4次損傷は爆発による高熱,あるいは有害物質が含まれていた場合に生じるものである.発生する損傷としては,気道熱傷,表皮熱傷,化学熱傷の他,CO中毒,メトヘモグロビン血症,シアン中毒などの中毒も考えられる.

●5次損傷はテロの場合考慮される.テロの爆弾はdirty bombと呼ばれ,被害を大きくするため,nuclear,biological,chemicalな物質を混入する.これらによって引き起こされる損傷を五次損傷という.

●実際の損傷は,1次~4次(場合によっては5次)が複雑に絡み合い,1つの損傷形態ができあがる.

●爆傷は身体的損傷だけでなく,精神的トラウマも大きな問題となる.早期からの専門家の介入が必要である.

●受傷状況の情報も重要である.爆発が閉鎖空間で起こった

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