A.病態
●銃創(射創)は米国における殺人事件の最も主要な手段であり,毎年約7万人が受傷して約3万人が死亡している.一方,銃刀剣の所持が厳しく規制されているわが国では,銃器発砲事件による死者数はわずかである.警察白書によれば平成20年で10人が報告されているに過ぎないが,猟に使用される散弾銃による銃創例は後を絶たず,決して無視できない外傷形態である.
●銃創に伴う病態は,銃の種類(ライフル銃,散弾銃,拳銃など),火器と生体との距離,創の解剖学的位置により異なる.一般には,弾丸の持つエネルギー,損傷を受けた臓器・組織,弾丸の最終的な位置の3要素が銃創の重症度を規定するといわれ,生体が受けるエネルギー量は下記の式で表される.
KE=1/2mv2
(KE:動的エネルギー,m:弾丸の質量,v:弾丸の速度)
したがって,弾丸の質量が大きいほど,またそれ以上に高速度の弾丸ほど,組織破壊が大きい.銃創