A.病態
●電撃傷は,電流が身体を通過する際に発生するジュール熱および電流の直接作用によって組織が損傷される真性電撃傷と,高電圧のアーク放電(4,000℃に達する)やその衣服着火によって皮膚が熱傷を負う電気火傷に分けられる.
●真性電撃傷の組織損傷度は,電圧,電流量,電流の種類(直流か交流か),通電時間,通電経路,その組織の電気抵抗によって決まる.
オームの法則:電流(I)=電圧(E)/抵抗値(R)
および
ジュールの法則:
電力(J)=電流(I)2×抵抗値(R)
に従い,電流は電圧が高いほど多くなり,単位時間あたりに発生するジュール熱は抵抗が大きいほど多くなる.電撃傷における電圧は通常1,000V以上を高電圧,それ未満が低電圧とされる.なお,電源の電圧だけでなく,単位距離あたりの電位差が損傷エネルギーとして重要であるといわれている(同じ電圧でも頭から足への通電より手から肘への通電のほうが単位距離あたりの電位差は大きく損傷も高度となる).
●身体構成成分の電気抵抗値は,神経,血管,筋,皮膚,腱,脂肪組織,骨の順に大きくなる.理論上は通電部位にある抵抗値の大きい組織で発熱量が多くなるが,実際には通電部位組織全体の合算した抵抗値に依存するとされている.接触部位である皮膚の抵抗値は乾燥時よりも汗などで湿潤すると低下する.
●一方,電流の種類も重要であり,一般に交流のほうが組織傷害が大きいとされている.なお,交流はテタニー様の筋収縮を起こすことがあり,これにより体全体の筋が収縮して跳ね飛ばされたり,脊柱の骨折を起こしたりする.逆に,この収縮により手指による電源の把持が持続して通電時間が長くなることもある.
●電流の通過経路としては,身体垂直方向の通電は心,呼吸器系,中枢神経がその経路にあるため最も危険である.水平方向でも手から対側の手では同様に重要臓器が経路にあるが,足から対側足では危険
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