Ⅰ.手の橈側の解剖と疾患
A.病態
●図1図を見ながら自分の手を触診してみよう.まず,母指を伸展してみる.手背側から長母指伸筋,短母指伸筋,長母指外転筋と並んでいる.これを長・短・長と覚える.長母指伸筋と短母指伸筋の間の窪みが嗅ぎタバコ入れ(anatomical snuff box)であり舟状骨骨折でここの圧痛と腫脹がみられる.舟状骨骨折は壊死を起こしやすい.
●短母指伸筋と長母指外転筋の二つは橈骨茎状突起の上で一緒になるが,DeQuervain腱鞘炎はここに圧痛があり,母指屈曲,手関節尺屈で痛みは増強する(Finkelstein's test).
B.初期診療,コンサルテーションと治療
1舟状骨骨折
①舟状骨骨折は手関節の正面・側面X線では見逃しが多いので,疑ったら舟状骨撮影を行う.偽関節になることも多いので,整形外科にコンサルトした方がよい.
②舟状骨骨折のギプス固定は母指を固定するが,遠位は母指I