A.代表的な物質と病態
工業用品の種類は膨大である.全ての情報を把握しておくことは不可能であり,その中毒の病態も物質によって様々である.毒性物質を扱う職場には化学物質安全性(製品安全)データシートが常備されており,労災事故の際には毒性や症状に関して参考となる.ただし,特異的治療に関する医学的情報には乏しいので,Webや中毒情報センターなどで別途調べる必要がある.
また,自殺企図や犯罪で用いられた場合には,薬物中毒であることすら認識されなかったり,正確な物質名の把握が困難なことも少なくない.
原因不明の意識障害,循環障害,代謝異常などでは,常に薬物中毒の可能性を念頭に置く必要がある.しかし,特異的治療が知られている物質はごくわずかであり,初期治療の中心は除染とバイタルサインの維持(ABCの確認と蘇生)であることが多い.比較的頻度の高い工業用品中毒の症状と治療を別に列挙するが,他項に含まれる工
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